平成14年10月の西病棟新築に伴い、同病棟7階に設置された周産母子センターは、
①疾患を持つ母体・胎児の管理・治療を行う「周産期医療部門」
②疾患を持つ新生児の管理・治療を行う「新生児医療部門」
③不妊治療を行う「生殖医療部門」
の3部門で構成されています。
新生児医療部門に新生児集中治療室(NICU)12床(平成28年~令和元年15床)、回復保育室(GCU)12床が、更に周産期医療部門に母体・胎児集中治療室(MFICU)6床が整備され、平成23年4月に熊本県内で2番目の総合周産期母子医療センター施設認定を受けました。
当センターは大学病院の機能を生かし、周産期医療部門、生殖医療部門は産科チームを中心に、内科系・外科系・精神系の各診療科と連携し、母体、胎児に高度医療を提供しています。新生児医療部門は小児科チームを中心に、小児外科の協力を得て、未熟な新生児や手術が必要な新生児への医療を、また眼科、脳神経外科、耳鼻咽喉科、皮膚科等の各診療科と連携して、特殊な疾患を持つ新生児への医療を提供しています。また、県内唯一の大学病院として、周産期医療に携わる医療者(医師、助産師、看護師、心理士、理学療法士)の育成にも力を入れています。
新生児医療部門の近年5年間の年別・疾患別の患者数の推移は下表の通りです。
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|---|
入院患者数 | 255 | 248 | 229 | 224 | 210 |
超低出生体重児 ( ~999g) |
16 | 18 | 6 | 9 | 7 |
極低出生体重児 ( ~1499g) |
39 | 44 | 44 | 42 | 36 |
人工呼吸管理症例 | 170 | 132 | 153 | 128 | 120 |
低体温療法症例 | 6 | 10 | 8 | 6 | 6 |
一酸化窒素吸入療法 症例 |
13 | 3 | 3 | 3 | 3 |
持続血液透析症例 | 0 | 1 | 2 | 2 | 1 |
新生児医療部門では従来、大学病院の専門性を生かし①先天代謝異常症、②重症新生児仮死、③遺伝性疾患等の患者を24時間対応で積極的に受け入れています。これらの新生児に対して、新生児専任医師による専門的な診療が提供されています。また看護スタッフは、児と家族のためのファミリーセンタードケアを常に実践しています。リハビリテーション部、ME機器センター、中央放射線部、中央検査部、薬剤部等と連携し、きめ細やかな医療の提供を行っています。新生児医療部門では病院の全面的なバックアップの元、最先端の高度医療の提供と、児と家族の絆を重視する医療の提供に日々努力しています。
周産期医療では母子センター内に6 床の母体胎児集中治療室(MFICU)、21床の産科病床を有し、年間約700件の入院、350例の分娩を扱っています。MFICU は陰圧設備を備え、COVID-19妊婦の経腟分娩に対応しました。前置胎盤、妊娠高血圧症候群などの異常妊娠・分娩の管理はもちろん、大学病院としての特性を生かし、さまざまな合併症を持つ妊娠女性の管理を受け入れています。さらにNICU と協力して24時間体制でハイリスク妊娠の受け入れに対応しており、年間約150例の母体搬送を受け入れています。
当院は産婦人科NICU、精神科を備えた県内唯一の病院であり、小児科、神経精神科と協力して妊娠産褥期の精神疾患について妊娠成立から出産、育児まで一貫した医療を提供しています。外来は周産期医療専任の医師3名が担当し、臨床遺伝専門医による出生前診断や遺伝カウンセリングも行っています。本院は日本産科婦人科学会専門医制度研修施設、日本周産期・新生児医学会胎児母体・新生児専門医制度の基幹研修施設の認定を受けています。
生殖医療は生殖医療専門医が中心となって担当しています。当院は、県下の他施設に先駆けて生殖補助医療技術(ART)を導入したほか、糖尿病や甲状腺機能異常症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)をはじめとした様々な合併症のある女性の妊娠に向けての集学的治療を行っています。また子宮内膜症の診断と治療に力を入れており、とくに外科的治療においては婦人科と協力して根治的な治療を目指しています。思春期発来異常については当院小児科、発達小児科の専門医と共に、全人的な診療を心がけています。また必要とされる方には資格を持った医師・助産師が不妊・遺伝カウンセリングを行い、生殖医療についての悩みに対応しています。また、婦人科との協力の下、24時間体制で腹腔鏡下異所性妊娠手術を行うほか、子宮頸管妊娠の子宮温存治療法にも取り組んでいます。生殖医療の医学教育にも力を入れています。