医療過誤の発生について
平成30年12月21日
本院において、尿細胞診の結果確認が行われず、検査の1年3ヶ月後に進行膀胱癌が判明した医療過誤が発生しました。患者様、ならびにご家族に対しまして、今回のような事態を招いたことを深くお詫び申し上げます。
医療過誤の概要及び経緯
- 2000年10月に本院消化器外科で食道癌手術を受け、その後経過観察中であった患者様が、2010年頃より残尿感が出現したため本院の泌尿器科を受診されました。前立腺肥大の診断でしたが、経過観察を継続していたところ、2012年1月頃から前立腺癌に特異的な腫瘍マーカーが徐々に上昇し、2012年7月に前立腺癌の診断のもと広汎前立腺全摘と拡大リンパ節郭清術を受けられました。
- 上記手術後、患者様は泌尿器科外来で定期的に経過観察を受けていました。2017年2月7日の外来受診の際、受診時に毎回行われていた一般検尿・尿沈渣で「尿路上皮5-9個/1視野、核形不整、集塊有」という検査結果が出ました。
- 泌尿器科外来では、外来担当医の業務をサポートする医師(処置係)が配置されています。2017年2月7日には、医師A(処置係)が外来担当医師Bからの依頼で尿細胞診検査をオーダーしました。
- 医師Bは、尿細胞診検査を依頼したことを失念し、その検査結果を確認いたしませんでした。もっとも、本院では未確認の病理検査結果がある場合には、検査結果確認のアラートが届くシステムがありました。しかし、実際に検査オーダーを行ったのは医師A(処置係)であったため、医師Bには検査結果確認のアラートが届きませんでした。なお、医師A(処置係)は、医師Bから検査オーダーのみを依頼されておりますので、アラートの確認はしておりません。
- 2018年4月17日に、がん登録センターから泌尿器科のがん登録医である医師Cに尿細胞診結果についての問い合わせがあり、その時点で尿細胞診結果が確認されていないことが発覚しました。尿細胞診検査の結果として、尿路上皮癌を疑わせる所見が認められたことから、医師Bの後任である医師Dが患者様に連絡をとりましたが、連絡がつきませんでした。
- 5月15日に肉眼的血尿のため患者様は外来を受診され、精査後に進行膀胱癌であることが判明し、遠隔リンパ節への転移も疑われました。6月15日に患者様は経尿道的膀胱腫瘍切除を受けられました。リンパ節転移に関しては、6月19日にCTガイド下生検を受けられ、6月29日に膀胱癌からの転移であると診断されました。
- 術後の病理所見とリンパ節転移の状況から、膀胱癌ステージ IVの診断となりましたので、現在、患者様は定期的に全身化学療法を受けておられます。
- 患者様とそのご家族には、6月14日(膀胱腫瘍に対する手術前)と6月29日(CTガイド下生検によりリンパ節転移が確定した日)にこれまでの経緯を説明し、2017年2月7日に行った尿細胞診の結果が1年以上確認されていなかったことを謝罪しました。
院内調査結果
6月11日に医療の質・安全管理部へ報告があり、直ちに病院長に報告しました。病理診断が確定した翌日の6月20日に医療安全調査専門委員会を設置し、検査結果確認漏れの経緯・原因を調査いたしました。
以下にその概要を記します。
- 電子カルテでのアラートシステムの不備
電子カルテシステムには様々なアラート機能がありますが、外来での病理検査結果については、オーダーした医師にのみ、未確認の検査結果が残っていることを知らせる設定となっていますので、本事案のように、オーダーした医師と外来担当医が違う場合には、アラート機能の効果がありませんでした。 - 外来診療における情報共有の不備
外来業務を複数医師で分担する場合の申し送り方法や情報共有方法が定められていませんでした。 - 院内での検査結果確認システムの不備
2017年2月時点では、院内に検査結果確認のための統一したシステムが存在していませんでした。2017年10月からは病理検査結果画面を改修し、検査結果を確認したあとで、検査結果画面に新たに追加した「確認済み」のボタンを押すことをルール化しました。院内で行われる全ての病理検査結果について中央病歴室でチェックを行い、未確認の検査結果を診療科長に送付し、確認を促しています。 - 類似事例の調査
2016年4月から2018年3月までの間に確認がなされていない病理検査がないかを調査しました。2年間で、悪性、または悪性疑いと診断されたものは組織診3,415件、細胞診1,330件ありました。これらをすべて電子カルテで臨床経過を確認しましたところ、全例において適切に対応されていることが確認されました。
再発防止のための改善策
- 院内で導入されている病理結果確認のルールを遵守し、病理検査結果は確定後1ヶ月以内に必ず確認することを徹底する。
- 外来診療においても診療科内での情報共有を行う。
- 現在導入している再発防止策の実施を継続し、さらに二重、三重のチェック体制を整備するよう努める。
今後本院において同様の事例が発生しないよう再発防止に向け、最善の努力をしていく所存です。